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野球部の思い出

僕の高校の最寄駅には喫煙所があり、スーツや作業服、学生服など、各々仕事用の衣類をビシッと身にまとい、ニコチンをチャージしていた。

「えっ、学生服?」僕が気付いたのは、入学からわずか数日のことだった。明らかに校章が入ったブレザー服に身を纏った坊主が煙草を吸っているのだ。

流行りのプレッピーな格好をした、おしゃれ坊主マンではない。幼稚な人間性とパンツが見えそうな腰履きスラックスにどう見ても学生服のブレザー、腐った根性が剃り方にも現れているバリカン坊主。明らかに高校生だ。

「うわあ… 偏差値30切ってそう…」たっぷり蔑んだ後、僕は清々しい気分で偏差値70の高校の門をくぐった。最後に門をくぐる時には下から1ケタの成績になっていたことは、この話には関係ない。

 

それから数日後、また喫煙坊主マンを見かけた。よく見ると2人いる。うわあ、類は友を呼ぶ、朱に交われば赤くなる、どっちが正しいんだろう、なんて思いながら通り過ぎようとした時、ふと気づいた。近所にこんなDQN高校あったっけ?

駅の近くには僕の高校しかない。時刻は8時を過ぎているし、今からだと遅刻確定だ。もっとも、制服で煙草を吸うようなザ・ドキュンに遅刻の概念があるかは微妙だけど、妙な違和感がある。一体なんなんだ。

そう思った時、ちょうど2人がこちらへ歩いてきた。「どこの高校か特定して学校に電話してやるからな」と持ち前の正義感を発揮させるべく意気込みながらすれ違うと、ブレザーのエンブレムをばっちり確認できた。

そこにあったのは、某大学の名前。「ああ、あそこの付属高校ね」と納得しかけたものの、すぐにおかしいことに気付いた。この地域であの大学の付属高校というと、友人が通っているあそこしかない。しかし、その友人とは制服が違う。これは一体…?

 

戸惑いつつも結局答えは出ず、そのまま高校を卒業した。しかし、大学に入ってしばらくしたある日、ついに真相が解明された。

ある日、駅で地元の友人に出会った。友人と呼べるほど仲がいいわけでもなかったけど、あまりに奇妙な格好をしていたので声をかけてしまった。

高校を卒業しているはずの年齢なのに、学ランを着ているのだ。

「おいおい、なんで学ランなんか着てるんだよ」僕が声をかけると、彼は「またか」というような呆れた顔をして、「野球部だからだよ」と答えた。

成績も素行も良好だった彼が一体なぜ、と戸惑いながら、「高校で留年したの?」と聞くと、彼はまた呆れた顔で笑った。「違うよ、大学の野球部だよ」

 

そこで初めて、大学の野球部員がブレザーや学ランを着ていることを知った。

そうか、あの時の喫煙坊主マンは大学の野球部だったのか。

うわあ、勝手に高校生だと決めつけてごめんなさい。

 

 

 

なわけねーだろ。

まぎらわしい格好すんなよタコ。ややこしいんだよ。

 

同様の理由で、学ランを着ている応援団も嫌いだ。

大体あいつらは声がでかい。うるさい。その気合、他のところで使えよ。おまえの学費のために今日も働いているパパを応援しろ。おまえ、自分と同じ大学ということ以外何の関係もない奴らの試合だぞ。そんなに気合入れて応援する必要あるのか? 本気で勝ってほしいと思ってるのか? そんなわけねえよな。バイトの時給50円上がる方がよっぽどうれしいだろ。そっちの方がよっぽど望んでるだろ。じゃあとっとと学ラン脱ぎ捨ててバイト先の店長に気合入れて嘆願してこい。そっちの方がいい。わかったな。

 

 

 

 

わかったな。