帰宅部の叫び

僕は中高と帰宅部で、大学でも部活やサークルには所属してこなかったんだけど、大抵の人は何かしらの集団に所属してきたらしい。そういう人たちと話していると、「部活(サークル)何してた?」という話題が一度は出てくる。当然僕は、「何もしてなかったよ」としか答えようがない。すると、彼らは必ず、「えぇーっ!」「嘘でしょ?」と驚きの声を上げる。そして、次に続く言葉も決まっている。「じゃあ、何してたの?」

 

調べてみると、部活に加入しているのは中学生で9割、高校生だと7割ほどらしい。大学生の部活・サークル加入率は統計によってばらつきがあるんだけど、5割弱というところ。まあ、少なく見積もっても9割は部活などに所属したことがあるようだ。そうでない1割の人間というのは、マイノリティーなんだろう。驚くほどのこととは思えないけど、まあギリギリ受け入れられる。僕が毎回ブチギレそうになるのは、「じゃあ、何してたの?」だ。

 

なぜそんなしょうもない質問をしてくるのか、まあ動機はわからなくもない。「普通の人間は放課後を部活に捧げてきたもんだけど、いったい君はその時間に何をしてたの?」と疑問に感じているのだ。別に僕を馬鹿にしているわけではない。彼らはナチュラルに疑問を抱いているのだ。そこに悪意は一切ない。

 

それでも僕は、彼らのくだらない質問への苛立ちを抑えきれない。なんだ、その部活やってて当たり前みたいなキモイ固定観念は。たかだか部活をやっていたぐらいで、私はちゃんと中学生やってきましたよ、当然の義務を果たしてきましたよ、みたいな傲慢な態度は。

 

振り返れば、面倒なタイプの女子がやんちゃな男子を涙ながらに告発し謝罪を要求するせいでなかなか解放されない究極の糞イベ「帰りの会」が終わると、僕は一目散に帰宅していた。早くパソコンの電源をつけて、ボンバーマンオンラインがやりたかった。他の生徒のほとんどは、部室や校庭へと向かっていく。僕はボンバーマンがやりたい、君たちは部活がやりたい、うん、いいじゃん。みんなやりたいことができていいじゃん。LOVE&PEACEじゃん。となればよかったんだけど、現実は違った。

 

「おまえはいいよなあ」部活へ向かうクラスメイトが僕に羨望の眼差しを浴びせる。「何が?」突然の言葉に戸惑う僕。「だって帰宅部だろ? もう帰れるじゃん。」言葉を失った。「は? 早く帰りたいなら部活辞めればいいじゃん。何言ってんだおまえ。」と心の中で思いながら、「へへ、いいだろ。じゃあな。」とはにかむ僕。中学校の3年間だけで100回は同じやりとりをした。

 

これも多かった。「よっしゃ! 今日部活休みだ!」部活が休みになって喜ぶクラスメイト。「は? 部活がなくてうれしいなら部活辞めればいいじゃん。何言ってんだおまえ。」と心の中で思いながら、「俺も今日部活休みだわ」なんてボケて、「おまえはいつも休みだろうが」と突っ込まれていた。

 

わかるよ。好きでやってる部活でも、早く帰れる奴が羨ましくなることだってあるだろう。たまには休みがあったらうれしいだろう。それぐらいのことはわかる。それでも、自分が好きでやっているくせに、それを何か偉いことか当然のことかのように履き違えて、帰宅部を相手に優越感に浸る。中学を卒業しても高校を卒業しても大学を卒業しても、いつまでもマウンティング。これは許し難い。

 

「ねえ、部活(サークル)何してた?」「何もしてなかったよ」「えぇーっ! 嘘でしょ? じゃあ、何してたの?」「ネトゲ」「へ、へぇ…」

 

僕は絶対に許さない。